東京地方裁判所 昭和52年(ワ)7462号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
【判旨】
原告は、右賃貸借契約は、土木工事用飯場のための臨時施設である仮設建築物を設置するため一時使用する目的で借地権を設定したものである旨主張するので、判断する。
<証拠>を総合すれば、次の事実が認められる。
原告は、山田建設に対し、昭和四四年三月一〇日頃、本件土地及び東側隣接地を、山田建設所有の臨時施設である仮設建物の設置等に一時使用する目的で、期間を六か月、賃料月額坪当金一〇〇円と定めて賃貸し、ついで、同年五月一日頃、綾瀬の土地を同様の条件で賃貸したが、これは、山田建設が、昭和三四年頃から、原告の居住地域にある綾瀬土地区画整理組合の行う区画整理事業に関連して水道、道路築造工事等を請負い、施行していたことから、山田建設の申入れに応じ、材料置場及び飯場として一時使用させるために賃貸したものであつた。
当時、星山は、星山土木の商号を用い、山田建設の下請業者として右工事に従事していたが、本件土地を現実に使用していたのは星山であつた。
そこで、原告は、綾瀬土地区画整理組合の工事担当理事である金子義造の紹介もあつて、昭和四五年四月一五日、星山との間で、本件土地を、前同様の目的で、期間一年、賃料月額坪当金二〇〇円の約定で賃貸する旨の契約を締結すると共に、山田建設との間で、同日、東側隣接地につき、右同様の条件の賃貸借契約を締結し、また、綾瀬の土地については、同年四月一日付で、前同様の目的で、期間六か月、賃料月額坪当金二〇〇円の約定で賃貸する旨の契約を締結した。当時、本件土地上には、星山が建築した本件建物二ないし四があつた。
原告は、その後、星山の要請に応じ、右土地賃貸借契約の期間を更新してきたが、昭和四七年七月一日頃には、本件土地を前同様の目的で期間を六か月、賃料月額坪当金三五〇円と定めて賃貸する旨の契約を締結した。
ところで、同年三月三〇日、星山を代表取締役とする星山建設が設立されたことに伴い、原告は、同年一二月二九日頃、星山建設に対し、本件土地を前同様の目的で期間を六か月、賃料は前同額と定めて賃貸し、その後も、星山建設の要請に応じ、右土地賃貸借契約の期間を更新していた。この間、星山建設は、本件土地上に、昭和四七年頃本件建物五を、昭和四九年四月頃本件建物一を建築した。
ところが、星山が昭和五〇年一月死亡したため、従来星山建設の取締役であつた被告張本が同年二月二二日付をもつて、代表取締役に就任し、同日付をもつて星山建設の商号を被告会社名義に変更し、同年四月三日付をもつてその旨登記した。
そこで、被告張本は、原告と星山建設との間の本件土地賃貸借契約の期間が満了する直前の昭和五〇年六月頃、原告に対し、右土地賃貸借契約の期間の更新を申入れたところ、原告はこれを拒絶して本件土地の明渡を求め、両者折衝の末、同月一三日頃、原告は、被告張本に対し、同年一二月三一日限り明渡す約定で、本件土地を前同様の目的で賃貸した(賃料は月額坪当金四五〇円)。
ところが、右賃貸借契約の期間満了直前の同年一二月一一日頃、被告張本は、原告に対し、右土地賃貸借契約の期間の更新を求めたので、原告は、期間を三か月(昭和五一年三月三一日まで)に限つて、右賃貸借契約を更新した(ただし、賃料は月額坪当金五〇〇円)。
しかるに、被告張本は、昭和五一年三月一日頃、再び原告に対し、転居先が見つからないからといつて、右賃貸借契約の期間の更新を求めてきたので、原告は、これに応じたが、被告張本は、期間満了の同年六月三〇日に至るも本件土地を明渡さず、かえつて、本件建物一につき、昭和五〇年七月三一日付をもつて被告会社名義で所有権保存登記を了すると共に、昭和五一年六月二二日付をもつて、債権者光永節子のために、債務者被告会社、債権額金六〇〇万円、同月一九日金銭貸借の同日設定契約を原因とする抵当権設定登記を了し、その後、原告に対しては、本件土地賃料の弁済供託をするに至つた。
一方、山田建設は、前記土地区画整理事業に関する工事の終了に伴い、昭和四五年暮頃、原告に対し、東側隣接地及び綾瀬の土地を返還し、原告は、これを昭和四六年一月頃、東宝建設に前同様の目的で賃貸したが、同年末頃綾瀬の土地の、昭和五一年三月末日頃、東側隣接地の返還を受けた。なお、原告は、現在も、綾瀬の土地を東新建設に対し材料置場及び事務所のため一時使用する目的で賃貸している。
被告会社は、現在、本件五の建物を倉庫として使用しているほか、本件一ないし四の建物をいずれも従業員の宿舎として使用しているが、本件四の建物は、原告が、被告会社を相手方として、昭和五一年一二月一五日、葛飾簡易裁判所に対し申立てた建物収去土地明渡請求調停事件(葛飾簡易裁判所昭和五一年(ユ)第七三号事件)の係属中である昭和五二年三月頃に増改築したものである。
以上のとおり認められ、<証拠判断略>。
以上認定の本件土地賃貸借契約締結に至る経緯に徴すれば、原告と被告会社との間の本件土地賃貸借契約は、土木工事用飯場のための臨時施設である仮設建築物を設定するため一時使用する目的で借地権を設定したものと認めるのが相当である。
(山口繁)